韓国でよく食べられるタウナギはウナギに似ているが、海に出ることがない淡水魚で、田や流れの弱い川に生息している。主に昆虫や藻を食べる。肉食系のウナギに比べると、身が硬く、かば焼きには向かない。
ソウルではタウナギをぶつ切りにして、たれに漬け込んだ料理が出てくる。アルミホイルに載せて温めて食べる。ご飯のおかずというより、酒のつまみの色合いが強い。ソウルによくあるホルモン系の店に置かれていることが多い。
見た目はよくない。珍味系といってもいいかもしれない。しかしソウルでは存在感がある。若い女性も平気で食べるからだろうか。韓国の女性は見た目が良くない料理にも抵抗がない気がする。
■ソウルのどじょう料理は、どんな料理?
その流れだろうか。ソウルにはどじょう料理もある。これはつまみ系ではなく、ご飯と一緒に食べる料理系だという。
日本にもどじょう料理がある。日本のどじょう料理は、丸鍋ともいわれるどじょう鍋と柳川鍋がある。どじょう鍋はどじょうがまるごと入った鍋で、東京の『駒形どぜう』が有名だ。なんでも東京の郷土料理なのだという。柳川鍋はどじょうを開き、骨を抜き、卵とじにした料理だ。
日本では各地でどじょうが食べられていた。僕は長野県の松本の出身だが、子供の頃、祖父の家に行くと、朝、どじょうを買いに行かされた。近くの魚屋には、ビニール袋に入れられたどじょうが用意されていた。祖父は毎朝、このどじょうが入ったみそ汁を食べた。なんでもどじょうは目にいいといわれ、視力が衰えた祖父は、まるでそれが薬のように、毎日、どじょうのみそ汁を食べていた。
つくり方はシンプルというか、残酷というか……。熱いみそ汁に、生きたどじょうをそのまま入れるだけだった。どうじょうの表面が熱で白っぽくなる。僕は苦手だった。
日本のどじょう料理は、肉類をあまり食べなかった江戸時代、栄養がつく料理として広まったといわれている。
しかし韓国は違う。昔から肉食である。以前、朝鮮通信使の話をまとめた。朝鮮通信使というのは、室町時代から江戸時代にかけ、朝鮮王朝からやってきた外交使節団である。江戸時代、船で大阪についた使節団は、そこから歩いて江戸に向かった。幕府は手抜かりないもてなしを沿道の諸藩に命じる。滋賀県では、関ケ原の闘いに勝利した徳川家康が上洛するときに通った道を特別に朝鮮通信使に開放した。その道はいま、朝鮮人街道と呼ばれている。
多いときで500人にもなった朝鮮通信使の宿泊先や食事の手配も大変だった。宿泊先は大人数が寝ることができる寺院が多かった。食事も気を遣う。彼らは肉食だったからだ。江戸時代、肉類を食べることは一般的ではなかった。調理できる人も少なかったという。ある時期から朝鮮通信使には調理人が随行するようになる。しかし肉類を寺院にもち込まなくてはならない。裏口からこっそり搬入したといわれている。
朝鮮通信使の話は韓国ドラマにもなっている。イ・ヨニやチャ・スンウォン、ソ・ガンジュンらが出演した『華政(ファジョン)』が有名だ。俳優のユン・エチョンが朝鮮通信使の道を辿るドキュメンタリー番組の『李藝─最初の朝鮮通信使』もある。
