コ・アソン主演新作『ケナは韓国が嫌いで』が話題のチャン・ゴンジェ監督、初長編作『十八才』が描く青春の痛みときらめき【韓流談義fromソウル】

チョン・ウンスク チョン・ウンスク
2025.02.07 02:00
コ・アソン主演新作『ケナは韓国が嫌いで』が話題のチャン・ゴンジェ監督、初長編作『十八才』が描く青春の痛みときらめき【韓流談義fromソウル】 チャン・ゴンジェ監督の特集上映は3月7日(金)東京・ユーロスペースほかで行われる。写真は『十八才』の主演、ソ・ジュニョン 配給:A PEOPLE CINEMA/ショコラ (C)mocushura

 チャン・ゴンジェ監督の最新作『ケナは韓国が嫌いで』(主演コ・アソン/『サムジンカンパニー1995』)が、3月7日(金)より日本で公開される。チャン・ゴンジェ監督は、キム・セビョク(『はちどり』)扮する韓国人女性が日本の奈良県を旅する映画『ひと夏のファンタジア』などで知られる気鋭の映画監督だ。

 そんな彼の作品群のうち4作が、3月7日(金)東京・ユ―ロスペースほか全国順次公開される。今回はそのなかから、監督初の長編作品『十八才』の魅力をお伝えしよう。

■青春映画『十八才』、主人公テフンが体験する十八歳の痛み

『十八才』主人公の高校生男子テフン(ソ・ジュニョン)は、ガールフレンドのミジョン(イ・ミジン)と二人で江原道(カンウォンド/現・江原特別自治道)の東海岸を泊りで旅する。帰宅すると、二人の家族は大騒ぎ。テフンは彼女の家に呼び出され、「大学に入るまでミジョンと会わない」という誓約書を書かされる。

 テフンのミジョンに対する思いは高まるばかりだが、これ以降、ミジョンはテフンと距離を置こうとする。中華料理店の出前のバイトを始めたテフンだが、交通事故を起こしたり、高校の担任に呼び出されたりトラブルが続き、ただただ打ちのめされる。

 日本以上に受験戦争が苛烈で、性的に保守的な韓国。そこで八方ふさがりになるテフンの気持ちは痛いほどよくわかり、身につまされるが、同時に彼がとても愛おしく見える。

『十八才』の主人公テフン(ソ・ジュニョン)とミジョン(イ・ミジン) 配給 A PEOPLE CINEMA/ショコラ (C)mocushura

■しがらみから逃れるために韓国人が向かうのは?

 閉塞感にさいなまれた韓国人は、そこから逃れようと旅に出ることが多い。行く先はたいてい東海岸。韓国の北東部・江原道の海のことだ。町で言うと束草(ソクチョ)、江陵(カンヌン)、三陟(サムチョク)辺り。多くのドラマや映画でそんなシーンが描かれている。

 Netflix配信ドラマ『ドクタースランプ』のジョンウ(パク・ヒョンシク)とハヌル(パク・シネ)は、アイスクリームやトッポッキのやけ食い、ゲーセン、屋台でのやけ酒では憂いを晴らせず、逃避行さながらに東海岸を旅した。

 ホン・サンス監督の映画『カンウォンドのチカラ』で不倫相手(オ・ユノン)が忘れられない主人公サングォン(ペク・チョンハク)が旅したのも、同監督の『夜の浜辺でひとり』でスキャンダルに疲れた女優(キム・ミニ)が旅したのも、ノ・ヨンソク監督の『昼間から呑む』で失恋の傷が癒えない主人公ヒョクチン(ソン・サムドン)が旅したのも、東海岸だった。

 ホ・ジノ監督の映画『四月の雪』では、ペ・ヨンジュンとソン・イェジン扮する傷ついた二人が道ならぬ恋に落ちる場所として、東海岸の三陟が登場した。チャ・スンウォン主演映画『約束』では、脱北してソウルに来たものの結ばれないカップルが、現実から逃れるため束草を一泊旅行した。

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