「町のケーキ屋」が消える深刻事情 もうショートケーキでは生き残れない時代に

ピンズバNEWS編集部 ピンズバNEWS編集部
2025.08.31 20:00
「町のケーキ屋」が消える深刻事情 もうショートケーキでは生き残れない時代に 街のケーキ屋さんの倒産が増えている ※写真/photoAC

 日々、若者文化やトレンド事象を研究するトレンド現象ウォッチャーの戸田蒼氏が本サイトで現代のトレンドを徹底解説。今回は、町のケーキ屋で倒産が相次いでいる現状に注目した。

「街の洋菓子店」として親しまれてきた“ケーキ屋”が今、かつてない規模で姿を消しつつあります。帝国データバンクの発表によると、2024年度の洋菓子店の倒産件数は前年の1.6倍となり、過去最多だったといいます。閉店の背景には、単にスイーツが売れないというだけでなく、中小規模のケーキ店、特に個人経営店にとって経営環境そのものが構造的に厳しくなっているという事情があります。

 要因の一つが原材料費の高騰です。ロシア・ウクライナ戦争の影響で小麦粉の価格が高止まりし、円安も重なって、生クリーム、バター、果物などすべての材料が軒並み値上がりしています。さらにカカオ不足でチョコレート製品の原価も上昇。ショートケーキやチョコレートケーキといった定番商品でも採算が取りづらくなっています。5年間でショートケーキの原価は2割、チョコレートケーキは3割上がったとの試算もあります。

 それでも、こうしたコスト上昇を価格に転嫁できるほど、消費者の財布の紐は緩くありません。

「“ケーキが高くなった”と感じた時点で、多くの人はコンビニスイーツや有名ブランドの商品に流れていきます。贈答用ではその傾向が強く、個人店の3000円の焼き菓子より、百貨店ブランドの4000円の商品が“映える”“喜ばれる”として選ばれる傾向にあります」(フードライター)

 このような状況を打開するには、何らかの“尖り”を持つことが求められます。たとえばグルテンフリーやビーガン対応、アイシングアートや米粉クッキーなど、明確な個性を打ち出し、SNSでファンを作ることができれば、生菓子中心でも生き延びる可能性はあります。一方で、毎日ショートケーキとシュークリームを並べるだけの店では、売れば売るほど赤字という悪循環に陥るケースもあります。

 また、焼き菓子での収益補填にも限界が見えています。かつては生ケーキでファンをつくり、贈答シーズンに焼き菓子で稼ぐというモデルが成立していましたが、今では焼き菓子も原価が上がり、ネット通販での競争も激化しており、利益を出すのが難しくなっています。

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