「町のケーキ屋」が消える深刻事情 もうショートケーキでは生き残れない時代に

ピンズバNEWS編集部 ピンズバNEWS編集部
2025.08.31 20:00

■ケーキ屋さんが生き残るために必要な戦略

「今、求められるのは、“ケーキ屋であること”にこだわらない柔軟な姿勢です。思い切って品数を絞り、焼き菓子専門に特化する。たとえば米粉マドレーヌやビーガンクッキーに絞れば、原価や手間を抑えつつコンセプトも明確になります。さらにSNSや口コミを活用して、“このお店でしか買えない”という特別感を演出できれば、まだ生き残れる余地はあります。もはやショートケーキだけで勝負する時代ではありません」(前出のフードライター)

 このように、既存の枠組みにとらわれない業態の転換が、生き残りのために急務と言えるのかもしれません。

 個人経営店が苦境にあえぐ一方、成功を収めているのが『シャトレーゼ』です。工場直販によるコスト削減、SNSやUGC(ユーザー生成コンテンツ)を活用したマーケティング、さらに店舗運営の省力化によって急成長し、現在は国内外に1000店舗以上を展開。品質と価格を両立した商品戦略に加え、SNS映えするパッケージやデザインも特徴です。

 こうした成功事例を参考にすれば、小規模店にもチャンスはあるはずです。ただし、大手のように設備投資や人材育成を行いたくても、個人店には資金的な余裕がなく、選択肢が限られるのが現実です。

「これからケーキ店が生き残るには、“なぜ自分の店が選ばれるのか”を明確にし、それに集中することが求められます。“焼き菓子だけでは寂しい”“やはりショートケーキを作りたい”という思いがあるなら、オンライン販売やSNSを活用して、新たなファンを獲得することも視野に入れるべきです」(前出のフードライター)

 ケーキ屋にとって、時代は確実に変わりました。もはや「生ケーキを並べるだけ」では生き残れませんが、新しい工夫や戦略を取り入れることで、未来を切り開いてもらいたいものです。

戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。

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