相撲界の内情や制度、騒動の行方を、元関脇・貴闘力が現場目線で読み解く。経験者だから語れる、大相撲のリアルが詰まったコラム。
6月30日、大相撲名古屋場所の番付が発表された。
新横綱・大の里が誕生したことで、久しぶりに東西に横綱がそろい、若い2人を中心に大相撲界も空前のブームになっている。
ただ、今年は6月から真夏のように暑い。大の里は、場所前に故郷の石川県津幡町でパレードをしたり、イベントが多かったから、体調が心配だ。豊昇龍はここぞとばかり、横綱初優勝を狙ってくるだろうけど、安定感に欠ける。
じゃあ、誰が優勝候補かと言うと、「これ」という力士が上がってこないんだ。体調管理が難しい名古屋場所は、以前から平幕優勝者が出る場所だ。伯桜鵬とか安青錦、金峰山、オレの息子の王鵬だって、優勝の可能性があるんじゃないの?
さて、以前からこの連載で話題にしている元佐渡ヶ嶽部屋の琴貫鐵こと、柳原大将さんが、佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)らを訴えていた裁判の判決がついに出た。
心疾患などを抱える琴貫鐵は、コロナ禍の際、両国国技館に行って相撲を取ることに不安を感じて、師匠に休場を直訴した。感染してしまったら、死に至る可能性もあったからだ。
ところが、師匠は「休場は許さない。それなら引退しろ」と、琴貫鐵に言い渡した。話はそれだけではなかった。部屋で起きた不当な扱い、兄弟子からのイジメなどがあり、琴貫鐵は引退を余儀なくされた。
実はオレは、琴貫鐵を少年時代から面倒を見ていた。不祥事でオレが相撲協会を去ることになり、オレの部屋に入門することはできなかったが、中学卒業後、縁があって佐渡ヶ嶽部屋に入った。