■「死者の名誉毀損罪」と「わいせつ物頒布等罪」を現役弁護士が解説
オンライン署名サイト『Change.org』では「八代亜紀さんの尊厳を保護し、リベンジポルノを阻止する」と題した署名が立ち上がり、賛同する歌手、芸能人らがSNS上で販売差し止めと反対の声を上げている。
「ファンの発売反対運動の影響もあってか、Amazon、タワーレコードオンライン、Yahoo!ショッピングなどでは商品ページが見られない状態になりました。それでも、現時点ではニューセンチュリーレコードの公式サイトから直接購入することは可能な状態ですね……。
発売日が21日に迫るなか、八代さんの生前の所属事務所がアルバムの発売を止められるのか、関係者、そして多くのファンが気にかけています」(前出の夕刊紙デスク)
そんななか、なかなか耳にすることはないであろう「死者の名誉毀損罪」と「わいせつ物頒布等罪」について、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に解説をしてもらった。
――まず、「死者の名誉毀損罪」についてと、今回それが成立するかについて教えてください。
「死者に対する名誉毀損罪については、虚偽の事実を摘示した場合でなければ、処罰の対象とはなりません。本件に関しては、商品説明欄に『八代亜紀氏が24~25歳のときに同棲していたT社のNディレクターによってポラロイドカメラで撮影されたフルヌード写真』との記載がなされており、代理人弁護士からはこの記載内容が事実無根であるとの主張がなされています。
そのため、仮にこの記載が虚偽であると認められた場合には、死者に対する名誉毀損罪が成立する可能性があります。また、当該記載や写真の販売行為が遺族の敬愛追慕の情を害し、精神的苦痛を引き起こす場合には、侮辱罪の成立や、民事上の不法行為に基づく損害賠償請求が認められる可能性もあります。
遺族は、当該商品を販売・企画した事業者に対して、不法行為に基づく損害賠償を請求することが可能です」(以下、すべて正木代表弁護士)
――今回のフルヌード写真を付けて販売することでの「わいせつ物頒布等罪」についても解説をお願いします。
「わいせつ物頒布等罪(刑法第175条)は、わいせつな文書、図画、電磁的記録等(以下『わいせつ物』)を頒布、公然と陳列、または有償で頒布する目的で所持・保管する行為を禁止しています。法定刑は2年以下の懲役または250万円以下の罰金、または科料です。法人が対象の場合は罰金刑が科されます。
わいせつ物に該当するかどうかについては、最高裁判例により、『いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』と定義されています」
――今回のケースでは「わいせつ物頒布等罪」が成立するのでしょうか。
「仮に、当該写真が本人の私的な状況下で撮影されたものであり、本人の意思に反して公開されたとすれば、『わいせつ物』に該当すると評価される可能性が高いと考えられます。
また、販売形態として封を切らなければ中身が確認できない仕様であるとしても、大衆の好奇心や話題性に訴えることによって営業利益を得ようとする意図が明らかである場合には、社会的にわいせつ性が否定されにくいと判断される余地があります。
なお、現時点では商品が未発売であるため、『頒布』や『公然陳列』には該当しませんが、販売を目的として所持・保管している場合には、わいせつ物頒布等罪に該当すると解されます」
問題のアルバム『忘れないでね』の発売は4月21日に迫っているが、八代さんの尊厳は守られるのか――。
正木絢生(まさき・けんしょう)弁護士
弁護士法人ユア・エース代表。第二東京弁護士会所属。消費者トラブルや離婚・相続・労働問題・交通事故・借金など民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。
BAYFM『ゆっきーのCan Can do it!』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組などメディア出演も多数。YouTubeやTikTokの「マサッキー弁護士チャンネル」にて、法律やお金のことをわかりやすく解説、配信中。
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