Netflix『イカゲーム』シーズン3の序盤は、主人公456番(イ・ジョンジェ)こそ前作のダメージを引きずっていて憔悴気味だが、その分脇役たちの活躍が目立った。今回はゲーム参加者に扮した俳優たちのなかから、怪しいムーダン(巫女、祈祷師、霊媒師)を演じた俳優チェ・グッキと、シングルファザーを演じた大人イケメン俳優イ・ジヌクに注目してみよう。
■『イカゲーム』参加者044番、怪しいムーダン役のチェ・グッキ、姉は有名女優チェ・シラ
ゲーム参加者はクセ者揃いだが、そのなかでも「天地神明」という言葉を乱発して意志の弱い参加者たちを洗脳するムーダンに扮したチェ・グッキの存在感は際立っている。チェ・グッキは1970年生まれで、ミュージカル女優として活躍するいっぽう、『夫婦の世界』などのドラマに出演している。
よく通る声と調子をつけた語り口は、『カルメン』や『明聖王后』、そして “名優製造所” と呼ばれる『地下鉄1号線』(1994年~2018年)などのミュージカルで鍛えられたものだ。
ソウルの大学路(テハンノ)で長年上演されてきたロックミュージカル『地下鉄1号線』は、地下鉄車内や駅に巣食うアウトサイダーたちの物語で、ソル・ギョング、キム・ユンソク、チョ・スンウ、イ・ジョンウン、キム・ヨジン(ヴィンチェンツォ)、アン・ネサン、チャン・ヒョンソン(キル・ボクスン)、パン・ウンジン(愛の不時着)などを輩出している。

チェ・グッキはイ・ジョンジェが準主役で出演した映画『10人の泥棒たち』の香港の怪しげなマダム役が強く印象に残っているのだが、なにより驚いたのは彼女が1990年代のスター俳優、チェ・シラ(1968年生まれ)の妹だったことだ。
妹チェ・グッキは個性派俳優だが、姉のチェ・シラは、今ならキム・ジウォン(『涙の女王』)やソン・イェジン(『愛の不時着』)に当たる正統派美人女優。当時はハ・ヒラ、イ・サンアと並ぶ三大スターの一人とされ、若者たちの胸を焦がした。チェ・シラは1980年代半ばからドラマで活躍していたが、とくに当時30歳を過ぎたばかりのチェ・ミンシクとハン・ソッキュ扮する若者と三角関係になる下町人情ドラマ『ソウルの月』(1994年)のヒロイン役は、多くの韓国人の記憶に残っている。