大型連休や夏休みに韓国旅行に出かけて、K-POPのコンサートやグルメ食べ歩き、ドラマのロケ地巡りなどを楽しむ人も多いだろう。今回はソウル滞在中におすすめの軽食、韓国風のトーストを紹介しよう。食パンにハムやチーズ、卵などの具材を挟んでホットサンドのように焼いたもので、日本では「屋台トースト」という名前で紹介されることも多いストリートフードだ。
■韓国の路上グルメ、屋台トーストを久しぶりに食べてみる
ソウルにパン専門店であるベーカリーが増える前、僕はよく、路上に停まったキッチンカー(屋台トラック)で買うことができる、この韓国風トーストを食べていた。朝食はパン──という嗜好の僕にはピタッとはまる朝食だった。
最近、ソウルではキッチンカーが減ってきている気がする。路上販売の規制の問題だろうか。ネットで検索していくと、明洞に路面店だが『ISAAC』という韓国風トーストの店があった。久しぶりに食べてみることにした。
一抹の不安があった。韓国風トーストは日本にも進出していた。そのサイトを観ると、パンに挟まれたふわふわ卵が強調されていた。韓国の屋台トーストもふわふわ卵に走っているのだろうか。
なんでも柔らかくなる……これは世界レベルの食の傾向でもある。しかし昔、僕が食べたトーストは違っていた。
調理はすべてキッチンカーに備えつけられた大きな鉄板の上でつくられていた。まずバターを敷き、それが溶けたところに食パンを押しつけるように置く。食パンはバターを吸いつつ焼かれるのだ。鉄板の隅には、すでにつくられた卵焼きが置かれていた。余熱で温めている感じだ。
その卵焼きはしっかり長方形に焼かれていて、「ふわふわ」などではない。それを焼かれた食パンに載せる。さらにハム、千切りキャベツなどの野菜、最後にスライスチーズを載せ、チーズが溶けてくるぐらいまで鉄板で焼く。
これが韓国風トーストだった。強調されるのはバター風味とチーズだった。「ふわふわ」卵ではない。
不安を胸に『ISAAC』の店頭に立った。目の前に鉄板がある。そこの隅には、10個以上の卵焼きが置かれていた。「これでなくちゃ」と胸をなでおろした。

当時、このトーストを朝食にする人はかなり多かった気がする。朝、道端を見ると、簡単にキッチンカーが視界に入ってきた。それだけ売れていたわけだ。
このトーストは、韓国では「キルコリトストゥ」と呼ばれていたらしい。「キルコリ」は路上の意味、「トストゥ」はトーストの韓国風の発音だった。つまり路上の立ち食いトーストという発想だった。
キッチンカーは1日中、営業していた。昼食用でもあり、おやつになるという、かなり守備範囲が広い食べ物だった。
日常生活に溶け込んでいたわけだから、韓国ドラマにもときおりさらっと登場する。『賢い医師生活』が記憶に残っている人が多いという。待ち合わせの場所がトーストのキッチンカーの前。先に着いたイクスン役のクァク・ソニョンがトーストをガツガツ食べている……そんなシーンもあった。