松岡茉優『ギークス』珍ドラマ化が加速 ミステリーでもヒューマンものでもない中途半端さと甘いキャラ設定が招いた低空飛行状態

ドラマライター・ヤマカワ ドラマライター・ヤマカワ
2024.09.05 08:00

■ぼやけっぱなしな『ギークス』

 脅迫犯は、パラリーガルの相田と思わせておいて、実は城之内の影響を受けた、マッサージサロンの女性スタッフというオチだったのだが、肝心の事件解決にも粗さが目立った。犯人だとバレそうになった時点で逃げればいいものを、寝てしまった西条をわざわざ拘束。さらに自分の犯行動機をベラベラしゃべり始め、その間に突入してきた警察官等に取り押さえられるというお粗末さ。ミステリものに期待するドキドキ感は皆無だった。

 だが、初回から振り返ってみると、そもそも同ドラマはミステリ部分を楽しむ作品ではないのかもしれない。では、頭は切れるのに人間関係に難アリな、“ギーク”なトリオの群集劇を楽しめばいいのかと思えば、そちらも難しい。

 というのも、西条(松岡)は“陰キャのぼっち”という設定のわりに、署内の人間とはうまく付き合っているし、単に仕事を面倒がっているようにしか見えない。吉良(田中)も今回、娘に会えない寂しさが強調されていたが、元夫とは良好な関係だったりと、悩みが感じられない。研修医時代の同期・馬場園(ウエンツ瑛士/38)というイケメン友達もいるのだ。基山(滝沢)も家庭問題が大変そうだが、弟妹との関係が崩壊しているわけではない。オフシャルでは「人間関係に難アリなギークトリオ」とされているが、とてもそうは思えないのだ。

 そんな中途半端なキャラ設定のため、3人が仕事や人生の困難をクリアしていくヒューマンドラマとして見ようとしても、かなり物足りない。ストーリー、キャラともにこの状態では、何を楽しめばいいのかぼやけてしまっている。視聴率や配信の不調もやむなしだろう。

 物語は終盤を迎えているが、第6話で描かれた、警察のデータベースへの不正アクセスの真犯人、西条が世話になっていた巡査部長・岡留(小林隆/65)が誘拐されたうえ、拳銃を盗まれた件など、謎はまだ残されている。これらの伏線回収で、ラストへの盛り上がりに期待したい。(ドラマライター・ヤマカワ)

●ドラマライター・ヤマカワ 編プロ勤務を経てフリーライターに。これまでウェブや娯楽誌に記事を多数、執筆しながら、NHKの朝ドラ『ちゅらさん』にハマり、ウェブで感想を書き始める。好きな俳優は中村ゆり、多部未華子、佐藤二朗、綾野剛。今までで一番、好きなドラマは朝ドラの『あまちゃん」ドラマに関してはエンタメからシリアスなものまで幅広く愛している。その愛ゆえの苦言もしばしば。

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