「韓国でオペをしてきたので抜糸をしてくれませんか?」“渡韓整形”ブームに形成外科医が感じる強烈違和感

西嶌暁生 西嶌暁生
2024.07.07 05:00

■美容手術を提供して「あとはよろしく」と帰国させる――

 韓国の美容外科医が、研鑽を積んだ日本の形成外科医に勝っているかは分からない。私は真面目で誠実でスキルを持った日本の形成外科・美容外科医を数多く知っている。

「美容大国」という韓国プロモーションのもとで、お金のために集客して、美容手術を提供して、「あとはよろしく」と帰国させる。国境も越えているとはいえ、同業者として、いかがなものだろうか。

 ただし、ニーズがあるからビジネスは成り立つ。そのようなシステムを良しとする、日本人の顧客がいるのだ。どんなに甘い言葉で誘われても、最後に判断するのは自分であり、責任も自分にある。

 健康は失って初めて気がつく。健康は当たり前ではない。それは間違いない。もちろん、頭ではわかっていても、若者の向上心や希望、劣等感、コスパ、流行りといった感情が、それらを上回って出国してしまうのだろう。

 このように、「韓国で旅行も兼ねて安く美容外科の治療」を受ける若者が増えている。言い換えれば、日本の美容医療の魅力が足りないということでもある。美容医療に携わる者の一人として、責任を感じる。

 少なくとも、外科医は抜糸まで責任をもって患者をフォローするべきである。もし、遠方から自分を慕ってきたくれた患者であり、どうしても抜糸までフォローできない場合は、抜糸をお願いする医療機関向けに紹介状を作成し、治療の詳細を伝え、患者もその重要性を認識しなければならない。

「韓国でオペをしてきたので、抜糸をしてくれませんか?」

 患者からそんな言葉が出る事態は不誠実極まりないことだ。患者自身にクリニックを探させるのではなく、抜糸の連携先確保や術後の合併症などが生じた場合のフォローアップ体制も整えて、はじめて安心してオペは受けられるのだ。

にしじま・あきお 1984年7月7日生まれ、富山県出身。形成外科・美容医療の専門医として10年以上、臨床と研究に従事し、2019年に開業。現在は東京・恵比寿こもれびクリニックの院長として勤務する。肌細胞の再生をキーワードに、美と健康のパーソナルドクターとしてオーダーメイド医療を提供している。

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