佐藤優の世界史講座 参政党の躍進編「参政党へのレッテル貼りは危険な結果をもたらしかねない」

佐藤優 佐藤優
2025.08.09 22:30
佐藤優の世界史講座 参政党の躍進編「参政党へのレッテル貼りは危険な結果をもたらしかねない」 佐藤優氏

めまぐるしい変化を見せる国際情勢において、その変化のスピードは日々増していくばかり。いま、世界ではいったい何が起きているのか。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が解説する。

7月20日、第27回参議院議員選挙では与党(自民党、公明党)が議席を大きく減らし、参政党が躍進しました。その原因は何なのでしょうか?

佐藤:確かに、与党の自民党と公明党が大幅に後退しました(自民13席減、公明6議席減)。この原因を、自民党のパーティー券「裏金議員事案」の余波とみなすと、事柄の本質を見失います。「裏金議員事案」は、きっかけに過ぎません。1990年代初頭より、自民党による「キャッチ・オール・パーティー(包括政党)」という国民全体の利害調整を行うというシステムは機能不全を起こしていました。そこに公明党が加わり、政策の幅を広げ、連立与党として国民全体の受け皿となる仕組みの維持に腐心してきたのですが、それが臨界を越えたのだと思います。

 参政党は、選挙区、比例区でそれぞれ7議席ずつ、計14議席を獲得したのですが、自民党を支持した有権者が参政党に流れたというよりも、今まで政治に関心をもたなかった国民が、今回、参政党ならば自分たちの利益を代表してくれると考え、投票したのだと私は見ています。

 

外国人排斥や「日本ファースト」を掲げる参政党は危険な極右政党なのでしょうか?

佐藤:そういうレッテル貼りが危険な結果をもたらすことになります。現時点での参政党は可塑性の高い政党です。一部の人々が、参政党を排外主義政党であるとか人種(民族)差別政党であると激しく批判していますが、この批判との相互作用で参政党が排外主義的で人種主義的な度合いを高めるという「自己成就する予言」になってしまう可能性があります。開かれた場での、丁寧な言葉遣いと、相互に人間的な敬意を持った、既存の政治勢力と参政党との対話が、参政党が極端な政治路線を取らないようにするために重要と考えます。

 

参政党以外に注目する政党はどこですか?

佐藤:永田町(政界)のウオッチャーは、ほぼノーマークでしたが、チーム「みらい」から安野貴博氏が当選したことが持つ意味は大きいと思います。この政党は、IT、生成AIを用いて、ファクトを基礎とした政治の実現を訴えるエリート・エンジニア等によって形成されています。現下日本政治における理性の破壊に歯止めをかける勢力として期待できると思います。(2025年7月28日脱稿)

佐藤優(さとう・まさる)
元外務省主任分析官、作家。同志社大学大学院神学研究科修士課程修了後、外務省入省。95年より外務省国際情報局分析第一課勤務。対ロシア外交の最前線で活躍し、「外務省のラスプーチン」の異名をとる。2002年5月に背任容疑で逮捕され、09年に最高裁で有罪判決が確定し失職。著書多数。