■「命の危険を伴うような演出は避けるべき」
――一般的に、マラソンの前、事後はどれくらい休養を取るものなのでしょうか? 横山さんは全国でライブツアーを開催中で、マラソンの前後の日程も過密スケジュールのようです。
「前日に頑張るのは、徹夜で勉強するのと同じこと。休んだ方がいいですね。
ライブでのパフォーマンスも極めて高い身体的・精神的負担を伴うため、十分な休養が取れないまま長距離走に臨むことになります。これは、疲労骨折や心臓への負担増など、深刻な障害を残す可能性を高めます。
そして、マラソン後も、人にもよると思いますが、ハードな音楽ライブなどを行なう場合、1週間は休養を取った方が良いと思います。
タレントとしての責務を果たすことは素晴らしいことですが、人間の身体的限界を超えた活動は、健康を害するだけでなく、生命の危険にもつながりかねません。適切な医療サポートや十分な休息がなければ、このハードスケジュールは極めて危険であると考えます」
――『24時間テレビ』は視聴率も高くて影響力が大きいですが、年々夏の暑さが厳しくなるなかでのマラソン企画をあらためてどう考えられますか。
「テレビというメディアは、社会に対して強い影響力を持つと同時に、それに見合う社会的責任があります。著名人が過酷な挑戦を成し遂げる姿は感動を呼びますが、それが“感動のために命を削る努力を称賛する”という誤ったメッセージとして視聴者に伝わる可能性があります。
視聴者がテレビの企画に影響を受け、自身の限界を超えて長距離走に挑戦し、熱中症やその他の健康被害に見舞われることは、現実的に起こりうる事態です。このようなリスクを助長する可能性のある企画は、慎重に再考すべきです。
感動は、健康や安全が保障されてこそ生まれるものであり、命の危険を伴うような演出は避けるべきだと考えます」
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番組公式サイトには《これまでも暑さ対策や医療体制などを万全に整えた上で、本企画の趣旨にご賛同いただいたランナーの安全に最大限配慮の上、実施してまいりました。今年も休憩の入れ方に万全を期して準備を進めております》と但し書きもある『24時間テレビ』だが、今後も酷暑下のマラソン企画は続くのだろうか――。
五藤良将(ごとう・よしまさ)
医療法人社団五良会理事長、五良会クリニックの白金高輪理事長。
1978年、千葉県生まれ。 防衛医科大学校卒業、防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院などで自衛隊医官勤として勤務。その後、津田沼中央総合病院などを経て、2019年9月に竹内内科小児科医院を継承し院長となる。日本内科学会ほか多くの分野の医学会に所属しており、診療は多岐にわたる。
スポーツドクター(日本医師会認定健康スポーツ医)の資格も持ち、実際に市民ランナーとして東京マラソンに出場して完走した経験も持っている。