■食生活にも生活寿命!
一方、“食”にまつわる生活寿命では、「行列麺寿命」すなわち「行列してまでラーメンを食べようと思わなくなる年齢」は43歳6か月。「大盛り寿命」は42歳3か月、「深酒寿命」とは「深酒を控えたくなる年齢」で、42歳11か月。いずれも40代前半に集中しています。
さらに興味深いのは「熱中寿命」。推し活や趣味に熱中し続けられる年齢を指し、女性は49歳4か月と10年前から5歳以上伸びています。母娘で韓国に遠征し、K―POPアイドルのライブを楽しむようなファン活動も増えており、こうしたコミュニティの広がりが熱中寿命を押し上げていると見られます。
また「流行語寿命」も注目されています。2014年の調査では47歳6か月だった流行語を日常的に使い続けられる年齢が、2019年には39歳5か月、2024年には36歳10か月と、この10年で約10歳も短くなっています。流行語はソーシャルメディアの影響で細分化が進み、オールドメディアが取り上げ始める頃には流行が終わっていることもあります。そのため、上の世代が流行語を追いかけるのは難しくなっているようです。
「手つなぎ寿命」も注目されており、夫婦で手をつないで散歩できるのは53歳5か月です。街頭調査では結婚3年目の夫婦がまだ手をつなぐこともある一方、50歳手前でほとんど手をつなぐことはなくなるという意見が多く聞かれました。歩くスピードの違いや、単に家族になってしまう感覚が背景にあるようです。
このように多種多様な生活寿命を知ることで、長生き時代の元気な生き方が見えてきます。
「この生活寿命調査は、年齢によって何ができなくなるのか、逆にどんな楽しみが長続きするのかを数値化しているのが新鮮です。生活寿命は時代の変化や社会的背景によって変わっていくものであり、例えば混雑を嫌う『人混み寿命』は年々早まる一方、『熱中寿命』は伸びているのがその一例です」(生活情報サイト編集者)
長寿社会では、単に“長く生きる”だけでなく、“どう生きるか”という視点がますます重要になるでしょう。
「こうした寿命を知ることで、年齢をネガティブに捉えず、むしろ新しい自分の楽しみ方を模索するヒントになるのではないでしょうか。年齢で線を引くのではなく、柔軟に変わっていく自分の暮らしを楽しむ視点が大切だと思います」(前同)
私たちが日常的に何気なく行っている行動にも“寿命”があるという視点は、年齢と向き合う新たな方法を教えてくれます。長く生きる時代だからこそ、生活寿命を知り、自分のペースで楽しみを続けていきたいものです。
戸田蒼(とだ・あおい)
トレンド現象ウォッチャー。大手出版社でエンタメ誌やWEBメディアの編集長を経てフリー。雑誌&WEBライター、トレンド現象ウォッチャーとして活動中。